白いシーツをゆっくりとめくるとき、彼女の指は微かに震えていた。その先には、もう動かない顔。でも目は開いていた――まるで「見てて」と言っているよう。今年も大晦日、時間は00:00を指すが、彼女の時計は止まっていない。
彼女が見せられた映像――酸素マスクをつけた彼が、意識あるまま微笑んでいた。医師が撮影した動画。その瞬間、彼女の涙は「喪失」から「証拠」へと変わる。今年も大晦日、記録された希望が、今も呼吸している。
フラッシュバックで現れる父と娘。オレンジのパジャマ、銀色の弁当箱。彼の手は優しく、傷だらけでも温かかった。今年も大晦日、あの日の笑顔が、今この冷たい部屋で彼女を支えている。記憶は死なない。
冷蔵庫のような部屋に掲げられたデジタル時計。09:30:55。彼女が駆け込んだ瞬間、数字は止まっていたように見えた。でも実は進み続けていた――彼の命が尽きた時刻より、ずっと後だった。今年も大晦日、時間のズレが一番辛い。
白いシーツを捲ると、青白いストライプシャツ。左胸ポケットの縫い目には「K.」の刺繍。彼女の名前の頭文字ではない。今年も大晦日、彼が最後に着ていた服に、別の誰かの想いが紡がれていたことがわかる。