緑のベルベットドレスを着た女の表情変化が素晴らしい。最初は冷静に見えたが、暴力が始まると恐怖に満ちた顔に変わる。許されない父のヒミツの中で最も複雑な立場にいる人物だろう。黒い服の少女を抱きしめながら震える手、その仕草に母性本能と無力さが同時に感じられる。演技力が光る瞬間だ。
ガラス張りのモダンな家が舞台だが、その冷たい雰囲気が人間関係の冷たさを象徴している。許されない父のヒミツの撮影地選びが絶妙だ。木製デッキの温かみと建物のごつごつした印象の対比、登場人物たちの感情的な爆発とのコントラストが印象的。建築が物語の一部になっている稀有な例と言える。
黒いジャケットの若者が地面に倒れ、苦悶の表情を浮かべるシーンが忘れられない。許されない父のヒミツの中で最も弱い立場にいる彼に同情せざるを得ない。頬の赤みが暴力の痕跡を物語り、必死に立ち上がろうとする姿に若者の無力さが表現されている。この役者の演技力には脱帽だ。
一人の怒りが次々と暴力を生み出す連鎖が見ていて辛い。許されない父のヒミツというタイトル通り、過去の罪が現在の暴力として現れているようだ。茶色いジャケットの男の怒りは正当なのか、それとも過剰なのか。判断に迷う複雑な心情描写が秀逸で、単純な善悪では語れない人間ドラマが展開されている。
最初は余裕綽々だった白いスーツの男が、次第に追い詰められていく様子が迫力満点。許されない父のヒミツの核心に迫る重要なキャラクターだろう。豹柄シャツに蝶のブローチという派手な装いが、彼の虚栄心を表しているようだ。最後には若者を支える姿に、複雑な父性を感じさせる演出が素晴らしい。