激しい口論の後に、娘が父親にスープを差し出すシーンが涙腺を直撃した。憎しみではなく、家族としての愛を選んだ瞬間。そして父になるという物語の核心は、許すことと受け入れることにあるのだと気づかされた。温かいスープが冷めた心を溶かしていくようだ。
母親役の女優さんの演技力が凄まじい。泣き叫ぶシーンでの顔の歪み方、感情の込め方がリアルすぎて、画面越しでも息苦しくなるほど。一方、娘の抑えめな演技との対比が鮮やかで、二人のキャラクターの違いが際立っている。短劇とは思えないクオリティ。
赤いカードが誰の手に渡るかで、家族の権力関係がコロコロと変わる様が面白い。最初は母親が支配していたが、最終的には娘がそれを握り、父親に手渡す。この小道具一つで、家族の主導権が移り変わる演出が見事で、脚本の巧みさに感心させられる。
最初は絶望的な雰囲気だったのに、最後には家族が揃って穏やかな表情になっているのが嬉しい。そして父になるというプロセスは、決して平坦ではないが、こうして一歩ずつ歩み寄ることが大切なのだと実感。ネットショートでこんな深いドラマに出会えるとは。
金銭問題という生々しいテーマを扱いながらも、根底にあるのは家族愛。母親の歪んだ愛情表現も、根を辿れば家族への執着なのかもしれない。娘の優しさが、その歪みを正していく過程が描かれており、見ていて心が洗われるような体験だった。