室内に入ってからの展開が最高にドラマチック。お母様が果物を並べながら見せる笑顔が、実は冷徹な計算に基づいているようで背筋が凍る。彼が彼女を庇うように前に出る仕草と、彼女が不安げに俯く表情。家族の絆という名の重圧が画面越しに伝わってくる。この空気感、日常に潜む恐怖をうまく描いている。
後半に出てくる黒いコートを着た女性とのやり取りが意味深。彼女は誰なのか、なぜ彼は彼女と会っているのか。それを遠くから見つめる彼女の表情が切なすぎる。運命の再会~愛の始まり?!の続きが気になって仕方がない。三角関係の予感と、それでも彼を信じていたい彼女の揺れる心が痛いほど伝わってくる。
彼女の着ている白いブラウスとベージュのワンピースが、この重苦しい雰囲気の中で唯一の清浄さを放っている。でも、その純粋さが逆に周囲の暗い思惑に飲み込まれそうで心配。手をギュッと握りしめる仕草や、涙ぐみそうな瞳の演技が素晴らしく、見ているこちらも胸が締め付けられる。彼女のこれからが心配でならない。
セリフがほとんどないのに、視線の動きだけで二人の関係性が理解できるのがすごい。彼が彼女を振り返る時の優しさと、彼女がそれに応える時の儚さ。言葉にできない感情の機微を、俳優たちが身体表現だけで完璧に演じきっている。運命の再会~愛の始まり?!というテーマにふさわしく、静かなる激情が画面から溢れ出している。
屋外の青白い月光のような照明と、屋内の暖色系の照明の使い分けが絶妙。外の世界の冷たさと、家という閉鎖空間の息苦しさ。色彩心理学をうまく使った映像美に感心する。特に彼女が窓際で佇むシーンの光の当たり方が、彼女の孤立無援な心境を強調していて、芸術的なカットだと思った。